境界知能(グレーゾーン)の子どもは、努力をしても「勉強が苦手」「授業でついていけない」と感じることが多いです。その背景には、ワーキングメモリ(作業記憶)の弱さが大きく関係していることをご存じでしょうか?
この記事では、
• なぜ境界知能の子は勉強につまずきやすいのか
• ワーキングメモリとは何か
• 具体的にどんな場面で困りごとが生まれるのか
をわかりやすく解説します。
【1】境界知能とは?(簡単なおさらい)
境界知能とは、IQ70〜84の“グレーゾーン”にある子どもを指します。
• IQ75以下は、軽度知的障がいとなることもある
• 平均より苦手な領域がある
• 学習や生活の中で「小さな困りごと」が積み重なりやすい
小〜中学生の頃は「なんとなくできない」「忘れっぽい」「勉強が苦手」という形で現れることが多いのが特徴です。
【2】「勉強が苦手」と感じやすい最大の要因=ワーキングメモリ
境界知能の子が勉強で躓く大きな理由のひとつが、ワーキングメモリ(作業記憶)の弱さです。
▼ワーキングメモリとは?
ワーキングメモリとは「頭の中で一時的に情報を保持し、同時に処理する力」のこと。
ワーキングメモリは、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力
引用元 りたりこ 発達ナビより
例えば…
• 黒板を見て内容を頭に入れ、そのままノートに書く
• 文章題を読みながら必要な情報を整理する
• 手順を記憶して作業を進める
• 会話内容を覚えたまま返答する
これらはすべてワーキングメモリの力が必要です。
▼境界知能の子に多い「ワーキングメモリの弱さ」
境界知能の子は IQ の中でも
言語理解
処理速度
作業記憶
この3つが、低くなりやすいと言われています。
そのため、
• 情報を一度に覚えておけない
• 聞いた内容をすぐ忘れる
• 指示を順番に処理できない
といった特性が影響します。
【3】ワーキングメモリが弱いと起こる勉強のつまずき
具体的には、以下のような困りごとが表れます。
【つまずき①】文章読解が苦手になる
文章題を読むと
• 登場人物
• 条件
• 数値
• 説明文の意図
など、多くの情報を同時に処理しなければいけません。
ワーキングメモリが弱いと読んでいる途中で情報がこぼれ落ち、内容を理解できないのです。
【つまずき②】算数・数学の手順を覚えられない
掛け算・割り算・方程式などは、
「覚える → 当てはめる → 処理する」
という流れが必要です。
しかし、途中で
• どこまで計算したか
• 次の手順は何か
• 途中の数値
を忘れてしまい、正答までたどり着けないことが多いです。
【つまずき③】板書を取るのが遅い・ミスが増える
「黒板を見る → 頭で保持 → ノートに書く」
これは典型的なワーキングメモリの作業です。
途中で情報が欠けてしまい、
• 誤字
• 抜け落ち
• そもそも書き写せない
といったことが起こりやすくなります。
【つまずき④】先生の指示を忘れやすい
先生が
「ノートを開けて、日付を書いて、問題3を解いてね」
と言うと、境界知能の子は…
→ 最後の1つしか覚えていない
ということが多くあります。これも、前提となる「ノート」「日付」がメモリから落ちて、1番最後の記憶しか、持っていないのです。
【つまずき⑤】テストで実力を出せない
テストは「覚える」「読み取る」「整理する」「答える」が同時進行するため、
ワーキングメモリが弱いと 理解していても点が取れない という状況が生じます。
【4】境界知能 × ワーキングメモリが弱い子に見られる特徴
● やっているのに覚えられない
● 手順が複雑になるほど失敗する
● ノートが空白 or ミスだらけ
● 指示が通らないと言われる
● マルチタスクが苦手
● 忘れ物が非常に多い
努力不足ではなく、脳の特性による「苦手さ」なことが多いです。
【5】効果的なサポート方法
家庭・学校で今日からできる支援を紹介します。
① 情報を「短く」「一つずつ」「視覚化」する
• 指示は一度に1つ
• 口頭ではなく紙に書く
• 図や表で示す
• 例題を見せる
これだけで理解度が劇的に上がることがあります。
さらに行動も1つずつにすると、できます。
例えば「算数の教科書と、絵の具セットと、運動靴を全部準備して」
ではなく、
- 算数の教科書を準備
- 絵の具セットを準備
- 運動靴を準備
とすることで、時間はかかるが、確実に準備ができるのです。
② 手順を固定化してルーティン化する
ワーキングメモリではなく、長期記憶に頼れる形にしてあげると成功しやすくなります。
• 宿題 → 明日の準備 → 入浴
• ノートの取り方をテンプレ化
• 計算手順を表にして机に貼る

これを繰り返し行うと、長期記憶となり、覚えられます。
私の次男も、体操教室にバス停まで歩き、バスに乗り、体操教室まで行き、そして、帰りも同じことをするのを、ルーティンにしたら、1人で行けるようになりました。
③ 適切な量の反復学習
境界知能の子は、
理解 → 定着 → 応用
の「定着」部分に時間がかかるのが特徴です。
だから、一気にやろうとしてはダメ。少しずつを繰り返す方が効果的です。
でも、そうなると、点数が取れない。
最初はそれでいいのです。点数は二の次。できることを増やすことが、結果的にテストも成績にもつながります。
④ 周囲が「努力不足扱い」をしない
境界知能の子は、人一倍努力していることが多いです。
叱責よりも、
• できたことを褒める
• 頑張りの過程を認める
• 成功体験を積ませる
ことが非常に大切です。
【6】まとめ
境界知能の子が勉強につまずきやすい最大の要因は、
ワーキングメモリの弱さと情報処理の負荷の大きさにあります。
決して怠けているわけではなく、
環境や学習方法を整えれば、理解度も成績も確実に伸びていきます。
大切なのは、「できない理由」を特性として理解し、対策することです。親である私たちが、まず理解していきましょう!

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